ナイルの風任せ
アスワンでは、動力は風任せ「ファルーカ」という帆掛舟で水上ドライブ。ホテルは島にあるそうで、風任せドライブのあとにファルーカが私たちをホテルまで運んでくれます。風を効率的に帆に受けるために、船はジグザグ走行。こっちの岸辺からあっちの岸辺へ、大型のクルーズ船の近くに寄ったり、島の林に近寄ったり、ナイルの川風を受けて快適な帆走をしています。
「こっちがカイロ?」と指差して船頭さんに尋ねたら、「アブシンベル!」と言われました。私の感覚だと、川は流れているのだから「下りが速い」。ところが、ナイルの流れはゆったりしているし、風はカイロ方面からの北風なので、上りのほうがずーっと速いのです。これは舟遊びといえば「急流を下る」と相場が決まっている日本からは想像もつかないことでした。
ファルーカは、舵を操る人、帆を操る人、そして、乗り降りのときだけ手を貸してくれる船頭さん(笑)の3人で一組。見回せば、あちらにもこちらにもスイスイと進んでいるファルーカが見えています。気持ちよく川風に吹かれていると、シシさんに「こっち側へ来てみて」と言われました。
反対側の船べりに行くと、あらら、子どもが手製のボートでファルーカに掴まっているではありませんか! 「どこからきたの?」と聞くと、「さっき、岸から」とのこと。この子は、突然、きれいな声で歌を歌い始めました。つまり、アルバイト?(笑) 自分のできる精一杯のことをして、なんとか稼ごうとしているのでしょう。
オババがポケットからキャンディを2個出して渡しました。シシさんは、それで十分といいますが、やっぱり現金がほしくてやっているのでしょう? そうやってバクシーシーを稼ぐ習慣のある国ですから。バクシーシーというのは、喜捨の一つとも考えられていますが、まあ、寄付を強要されるとでも考えればよろしいかと(笑) 遺跡で係りのおじさんが片言の英語で説明してくれるのを聞いて、フムフム、固有名詞ししかわからん、と思っているとすかさず「バクシーシー、プリーズ」とやられます。相場1ドル(80円ぐらい)なので、これは素直に出しておきましょう(笑) だしたくなければ説明は一切、聞かないということ。だんだん、コツがわかってきました。
手作りボート、といっても、まあ、要は1枚の板に乗って、手に小さな板を持って水をかくだけのものですが、そのボートを操って、観光客の乗るファルーカまでやってきて、少しでも稼ごうという子どもは健気じゃありませんか(笑) いまは冬で、水もそこそこ冷たいのです。1ドル、バクシーシーしました。子どもはにっこり笑って、また歌をうたい、しばらくするとせっせとボバリングして、川を渡って行きました。別のカモを見つけたかな?(笑)
馬車でバザール
ルクソール最後の夜は、荷物回収のために予定より早めに動いたので、時間がたっぷりありました。そこで、夕食後、人々で賑わう夜のバザールへ行ってみることにしました。乗ったら最後、ぶったくられるのは必定、という馬車に乗って(笑)
私たちだけでは危ないというので、ガイドのシシさんがついて来てくれることに。知り合いの信用のできる馬車屋のおじさんを呼んで、一緒に乗ってバザールへ。こういうところが、ふたりしか参加していていないツアーのメリットです。ついでに、日本語でバザールの紹介までしてくれました。
しかし、この馬車、すごいです。普通は人しか歩けないだろうという、せまいバザールの道へどんどこ入っていってしまいました。馬車の上から手を伸ばせば、お店のものに触れるというくらいギリギリ走行。頭の上に衣類が掛かっていることがあり、そんなときは首をすくめて暖簾をくぐるような状態。シシさんは、「どんどん触っていいよ!」と言いますが、日本的な感覚では、「売り物でしょ?」とつい思ってしまいます。
ときには、お店の人が出している縁台のようなものを片付けさせたりして、馬車は進むよ、どこまでも♪ シシさんいわく「この御者は、性格が落ち着いていて、絶対に喧嘩をしないからいい」のだそうです。まあまあ年配の御者でしたが、若い人だとときおり、バザールの人と喧嘩になったりするそうです。しかし、この強引ともいえる馬車の歩みで、喧嘩にならないほうが不思議かも(笑)
途中で降りて、バザールを散策し、シーシャ(水たばこ)を体験しながらミントティーをいただき、再び馬車に迎えに来てもらってホテルへ帰還。王侯貴族というほど立派な馬車ではなく、単なる観光用ですが、足の弱い年寄りと一緒でもバザールを堪能できました。
日本人観光客激減
笑いごとではなく。観光客が減っているから、いま行ったらウエルカムに違いないでしょ! と言って敢行したエジプトツアーですが、ウエルカムどころではありません。主として日本人観光客が泊まっていたホテルとか、日本人向けに営業しているおみやげ物やさんとか、みなさん、片言の日本語を話し、困った、困ったと。ガイドさんばかりではなく、関連業者がみんな深刻です。おみやげ、買わないわけにはいかなくなる……(笑)
観光客が減ったことは、正規の仕事を失った人も多いということのようで、観光地の物売りは激増。しかも、しつこさも倍増……という場合も。観光客相手に営業している馬車なども、ほとんどが空で街を走らせています。馬の餌代もかかるだろうしねぇ。安全面からいえば、まだカイロには行っていませんが、観光地は革命前と変わりません。物売りがしつこいというのは、危険ではないでしょう(笑) しつこいと言っても観光中もついて回るようなことはなく、中国に比べればしつこいとさえ言えないくらい(笑) 中国といえば、やはり景気がいいのはかの国だけ? 観光地で「ニイハオ」と呼びかけられることが、かなりあります。こちらは、増加傾向なのでしょう。「ノット チャイニーズ」と言って、フンっとします(笑)
手荷物回収
翌日は、お風呂には入ったものの汚いままで観光(^^; 観光を一つ取りやめて……という考え方もあったのですが、シシさんが「それはもったいないから、1時間早く出発!」と言ってくれて、朝6出発の段取りに。レストランも5時半から、朝食をサービスしてくれるそうな。申し訳な〜い。ドライバーのハマダさんはもちろん、英語ガイドさんも朝から来てくれて、本当に申し訳なーい・
この日は、郊外のラムセス2世とクレオパトラのハトホル神殿に弾丸観光。クルマで片道4時間以上かかるところです。そして、夕方、遺失物係が閉まる直前の5時に空港に到着。英語ガイドさんと一緒に空港に入り、あっちこっちでごめんなさい(笑) 行って、確認して、受け取ればいいだけかと思ったら、これがなかなか時間がかかりました。遺失物係が、ゲートの内側にあるので、空港内に入るための手続き、あちこちで保安検査……、その後、やっと荷物にたどり着き、着いたら、あとはサインをして受け取るだけなのだけれど。
キャスターバッグを引っ張って駐車場に戻り、みんなに笑われました(笑) 英語ガイドさんからは、「もう、忘れないでね!」と言われ、I'm sorry! しか、ないでしょう、ここは。ほんとにまあ、しょっぱなから迷惑な客であります。おかげさまで、やっと着替えることができました。キャスターバッグを開けてみると、トランクキーだけじゃない、保険証書も帰りの飛行機のEチケットもここでした。もし、出てこなかったら……エジプトに住むことになったかもしれませんねぇ(-_-;
あちゃ!
1日目は、カルナック神殿、ハトシェプスト女王葬祭殿、王家の谷、ルクソール神殿と、ナイル川西岸と東岸を忙しく駆け回り、観光。どれもスケールが大きく、圧倒されますが、だんだん何が何だかわからなくなってきます(笑) あとで写真を見て、「そうそう、これこれ」といった感じに。これらの遺跡観光の話は、あとでゆっくり話しますという感じで、とりあえずホテルへ帰着。
私たちにあてがわれたのは、トヨタのワゴン車。10人ぐらいは乗れそうな車内に、ふたりでのうのうと乗っています。ドライバーはハマダさん。ダウンタウンの?という感じですが(笑)、運転に専念していて、英語も日本語も話しません。そのクルマでホテルに到着すると、さきほどの英語ガイドさんも来ていました。いたれりつくせり(笑)
ところが、荷物を降ろそうとすると、手荷物がない? 私たちは大型のトランクを各自1個、オババのバギー、そして私の機内込み用キャスターバッグの4つの荷物を持っていました。キャスターバッグの中から、貴重品を入れたリュック型バッグを取り出し、肩に掛け、キャスターバッグのほうはクルマのトランクに積んでもらったはず……。
ひょっとして、駐車場に置き忘れたのでは? ガイドさんふたりを、それぞれ携帯電話を取り出して、空港に電話するやら、どこかに電話するやら、てんてこ舞い状態にしてしまいました。フロントやベルボーイなどホテルの人も心配して大勢、集まってきてくれて……。とにかく、オババと荷物をホテルに置いて、ガイドさんたちと共に空港へ捜しにいくことに。
駐車場には何もなく、駐車場の警察に聞いてもお届け物はなく……。空港に入れる英語ガイドさんが中に聞きに行ってくれました。シシさんいわく、「駐車場なら絶対出てこない。空港内なら出てくる」と。「ほんとに駐車場までは持ってきた? 中に忘れたんじゃない?」 うーん、そう言われると「クライムエリアまでは100%持っていた。荷物を回収して、カートに乗せた。トランク2つにバギーを乗せたら、いっぱいだったので、手荷物は私が引っ張っていた……あたりから95%」。なにせ、オババはすぐ座れるところを見つけて座り込んじゃうし、何もできないのに「チップはいいの?」とか、いまする話じゃないような余計なことは言うし(笑)、とにかく黙ってついてきて……と叫んでいるような状態だったし……。
空港に入って行った英語ガイドさんはなかなか戻ってこない……。シシさんは、「もし、駐車場に置き忘れて、荷物を確認しないで出発したとなると、彼はクビになるかもしれない」とか言うし。「いや、私が悪いのだから、もし出てこなくても会社に報告しないで! 中に入っているのは、ほとんどPCだけで、携行品保険も入っているから」と、もう悲壮な感じになりはじめた頃、英語ガイドさんが戻ってくるのが見えました。
シシさん、「足取りからみて、5%のほうみたい(笑)」。ほんとに、そうでした。どこにあったかといえば、クライムエリアだそうです(-_-;; 100%自分の責任じゃ〜ん!という感じです。荷物はあったのだけれど、係がもう閉まっているので、明日の10時から17時の間に取りに来てくださいとのこと。みなさん、お手数かけてすみません(泣)
すごすごとホテルに帰り、着替えようとしたら、トランクの鍵がキャスターバッグの中! わっ、着替えもできない! 出発前から、いったい何時間、着ているのでしょう、この服を。汚〜い! 靴下だけは、カタール航空が機内でくれたものがある……。