甲斐霊場めぐり
私は別に悪行を重ねたつもりはありませんが(^_^;)、もし、後になっちゃったら汚れ水を渡らなきゃならなくなるし、ここはひとつ、お付き合いしましょうってんで、甲斐百八箇所霊場めぐりを敢行することにしました。簡単にいえば、要するに運転手。煩悩の数と一緒だし、ちょうどよいのではないかと。いっぺんには無理なので、ちょっとずつね。
霊場はどこでもよかったんだけど(^_^;)、都内は移動に混雑が見込まれるところも多いし、今年は風林火山だろうというので、あっさり山梨県に決定! いいかげんなもんです。ついでに山本勘助の墓参りでもしてきますか<いっぱいあるらしい
というわけで、第一番「善光寺」に行ってきました。一般には甲斐善光寺といわれています。武田信玄が長野の善光寺からご本尊を奪ってきて祀り、また奪い返されちゃって、いまは別の阿弥陀如来がご本尊とか。善光寺というのはもともと土着信仰と関係が深いらしく、調べてもいないのでわからないのですが(無責任!)、けっこう全国に善光寺という名前のお寺がたくさんあるようなんですよね。
甲府は、ちょっと高台のほうに行くと、本当に街全体が見下ろせます。そして山を背負い、三方も山。盆地なんだなぁとつくづく感じられます。今日はめちゃめちゃ蒸し暑かったですが、梅雨の晴れ間で、富士山もくっきり見えました。この高みから富士を目前に拝し、集落全体を見下ろすと、武田信玄ならずとも「要塞堅固っ!」って感じがします。
永泰寺(甲斐霊場第93番)
霊亀山永泰寺は旧上九一色村古関、いまでは甲府市古関にあります。かのオウム事件で「サティアン」と呼ばれた建物があったことで一躍、全国区になった上九一色の地名は町村合併で消滅したのでした。なんだか、びみょ〜に残念(^_^;)
いまでは静かな山村の趣がある古関ですが、かつて険しい山道でありながらも甲府盆地から駿河へと抜ける重要な動脈だったそうです。武田と今川の付き合いを考えるとさもありなんという感じでしょうか。ひっそりとたたずむ永泰寺も、かつては道中の無事を願う旅人でににぎわう大きなお寺だったようです。石垣が積まれ、道路からは石段で登っていくお寺の入口には茅葺きの山門がしつらえてあり、門をくぐると本堂となかなか装飾的な釈迦堂、そして鐘楼があります。本堂の板戸は最近、張り替えられたらしくピカピカの新しい板でした。周囲の風雨にさらされた質感のある柱などと、なんだかそぐわない(^_^;) これも数年、あるいは数十年もたてば、しっくりとなじむのでしょう。
残念ながら中へは入れませんが、釈迦堂の中は欄間や天井に江戸時代の細工が施されているそうです。ご本尊の釈迦如来像は清涼寺式の彫刻で、京都にあったものを夢窓国師が戦乱によって火にかかるのを恐れてここに移したという言い伝えが残っています。
霊亀山という風変わりな山号は、ご本尊の釈迦如来像が洪水で流されそうになったとき、一匹の大亀が現れてこの像を背に乗せ、濁流を泳いで渡って助けたという由来があるのだとか。いい話のような怖い話のような……。
それより何より、せっかく訪ねたお寺なのに、カメラを持って行くのを忘れました〜。もう、取りには帰れないところまで来てから気づきました(-_-;) で、今回は携帯電話と途中で買ったインスタントカメラでしのぐことに。やっぱり画像はイマイチですね。まあ、いつものコンパクトデジカメでも、たいしていい写真が撮れてるわけじゃないけど(笑)
光勝寺(甲斐霊場第95番)
静けさや……という句が似合いそうな、山あいの古いお堂が市瀬山光勝寺でした。長い間、無住だったとのこと、もう少しで朽ちてしまうのではないかといらぬ心配をしていまいそうですが、現在は本堂の横手に立派な庫裏も建ち、十分にお世話をしてもらっているようです。
長い石段を登っていくと広目天と多聞天が目を光らせている山門があり、その奥の深い木立ちの中に本堂はあります。この山門にはわらじがたくさん掛けられていて、それを見るとここがかつて旅人の守護をしていたお寺であったことが偲ばれます。山を越えて旅をする人々が、道中の安全を願って、ここのわらじを奉納したのうでしょう。鎌倉時代には、武田一族が頼朝への奉仕で交代通行の際に、この寺で人馬の足を休ませたといいます。参 勤交代のようなものが、鎌倉時代にもあったんですね。
このお寺は1220(承久2)年、宥教によって高野山金剛頂院の末寺として、真言密教の行の道場として開かれました。いまも高野山真言宗のお寺。ご本尊は千手観音菩薩で、運慶の作といわれますが、ほんとかな? 14世紀初頭には後醍醐天皇の勅願寺となっていたそうです。
お寺のすぐ前には芦川の渓流が音をたてて流れていました。岩場があり、流れはなかなかに強そうですが、水量は少ないため、子どもたちの格好の遊び場のようです。夏休みに入った午後、数人の子どもたちの歓声が聞こえてきます。涼しそうでうらやましい限り。紫陽花の季節にはお寺の背後の山を彩り、新緑の頃には渓谷が山吹色に染まるのだとか。自然が堪能できるお寺の一つです。