連載読物 目次
幸運をバイする旅人(たびにん)〜〜縁日はテキヤの庭〜〜第一章 -8-
最近では組み立て式の三寸や天張りが出回ってきて、大のオトナでもそういうものを使っているから、この年で一人前に天張りが上げられて、三寸が組み立てられるってのはヒデぐらいなもんだろう。オヤジにぶっ飛ばされるのが恐くて、とにかく覚えははやかった。 おっかさんとねえちゃんがやってくる頃にはヒデの「ノゾキ」、おっかあとねえちゃんの「コヨミ」と「テコボウ」を商う三本の店ができあがっている。テコボウってのは、これで飯を食うと無病息災、健康長寿とタンカを打って売る南天の箸のことだ。軽くて持ち運び便利、健康にいいかどうかは知らないが、利益率はいい。これら縁起物系のネタはすべて「オガミ」と総称されている。 ヒデ一家の稼業はオガミ系テキヤである。