宝寿院(甲斐霊場第96番)
金剛山宝寿院は甲府盆地が眼下に広がる高台にあります。目を上げれば南アルプスの大きな山々がどっしりと構え、深呼吸をしたくなるような風景。このあたりはかつて平塩の岡と呼ばれたそうですが、由来は近くに塩泉が湧いていたことからだとか。海から遠いところなのに不思議です。
境内には石が敷き詰められていて、ちょうど植木屋さんが手入れ中だったお庭もよく管理されているという印象です。このお庭は夢窓国師が作ったということで有名。 岩に低木、高木が美しく配置されています。
立派な鐘楼があり、お寺ではいまでも1日5回、時間を決めて鐘を突くので、近隣では「宝寿院の鐘」を時刻のめやすにしている方々も多いのだとか。鐘楼の隣には樹齢200年といわれるシダレザクラがあり、春には訪れる人々の目を楽しませているそうです。
ご朱印をお願いすると、一緒に念珠をくださいました。「同行二人腕輪念珠」と書いてあり、お大師さまのお力がいただけるというもの。高野山の杉で作られた素朴な腕輪の感じで、木肌が美しいのですが、ゴムがちょっと……、すぐに切れてしまいそう(^_^;) はずして作り直したら、ご利益はなくなっちゃいますでしょうかね?
八甲田山
山登りとはとんとご縁がないのに、ロープウェイという便利な乗り物のおかげで、八甲田山ではユニークな造形に出会うことができました。アオモリトドマツの松ぼっくり、だそうです。なんと、紫色なんですよ! 「わー、持って帰りたい」と思いましたが、自然保護地区なので、当然、落ちているものを拾って帰ってもダメです。残念(笑)
明治35年に青森歩兵第5連隊を200名も飲み込んだという山も、夏は爽快で、十分整備もされていて、遭難の心配はなし。という、ところしか、行かないのだけれど。山頂には散策路が作られていて、60分コースと、30分コース。もちろん、何の迷いもなく30分コースを選択(^_^;) この日は快晴でしたが、地面の悪いときには、ロープウェイの山頂駅で長靴まで貸してくれるようです。
ロープウエイで登っていく途中で植物分布が変わっていくのがわかったり、たった30分歩いただけでも、樹林あり、湿地帯あり。うっそうと茂る木々の間に、可憐な花を見つけたり。あちこち壊れている上に、体力にはからっきし自信のない身にも、山歩きの好きな人の気持ちが少しだけ、わかったような気がします。遠くに美しい姿の岩木山を望むこともできました。遊びに行ったときの晴天確率が高いなぁ、わたし。
ロープウェイの駅では、ちょうど映画「八甲田山」フェアのようなものをやっていました。1977年公開の作品だそうです。ひぇ、加山雄三が青年ではありませんか! 高倉健も三國連太郎もお若い!(笑) そりゃ、そうですね、もう30年以上も前の作品です。
撮影も厳寒期の八甲田山系で行われたそうで、いろいろな苦労話があるようでした。時間がなくて、解説をあまり読んでこられず、残念。いまでも自衛隊が訓練を行うそうですが、装備もその頃より充実しているし、さすがに遭難はないようです。よかった、よかった。
十和田湖
青森県の一番の観光地といえば、やっぱり十和田湖でしょう。というわけで、十和田湖にも行ってきました。3回目か、ひょっとすると4回目ぐらいかもしれません。とにかく、青森に来たときは必ず行っているような……。奥入瀬渓流が地震で崩れたという報道がありましたが、もう復旧したそうです。さすがにすばやい対応ですね。
今回はクルマで展望台巡り。十和田湖には4つの展望台があります。そのうちの3つを廻りました。なぜ4つではないのか? ははっ、道路工事に気をとられているうちに初荷峠は行き過ぎてしまったんですよ(-_-;)
まず最初に眺めたのは滝の沢峠からの十和田湖。生い茂った樹木の向こうに見える水面は穏やかで青く、涼しげでした。
そして、ここに訪れた人は、まず必ず行くだろう乙女の像まで歩いてみました。散策コースができていて、湖面からの風が肌に心地よい道です。途中に木道のようなものができていて……、前にはなかったような気がします。どんどん整備されているのでしょうね。いいような、寂しいような。
乙女の像の置くには十和田湖神社がありました。ここは初めて。神社があることすら知りませんでした。自然を愛する人々がお参りする神社なのでしょう、健脚を願うお守りなどがあり、人気があるようでした。
次は瞰湖台展望台。なるほど湖を俯瞰できるところというイメージですね。これが湖? 海ではないの? と疑いたくなるほど、広々とした水面に島がぽっかり。実際は島ではなく湖に突き出た半島なのですが、まるで島のように見えます。展望台の横には切り立った崖があり、これも不思議な風景。
最後に行ったのが御鼻部山展望台。また違った十和田湖の姿を見たばかりではなく、野生の狸に遭遇! 地面を掘り返して何か食べ物でも探しているようです。しかも、近づいても逃げない! それどころか、呼んだらこちらを振り向きました(笑)
この辺りには、もう赤とんぼがとんでいます。そして、耳元では……、ブーン……、あ、あぶ? 刺すのだけはご勘弁ください、お代官様。あわてて、クルマに戻りました。
城ノ倉大橋
八甲田山のロープウエイに行く途中で「城ノ倉大橋」を通りました。八甲田山麓の国道394号線にかかる橋で長さが約360メートルあります。橋の上は駐停車禁止になっているのですが、たまたま後部座席にいて、しかも交通量がほとんどないということで、最徐行、一瞬の停止を敢行してもらい、橋の中央でクルマから飛び降りました。いえ、橋から飛び降りて自殺しようとしたわけではありません。あまりにすごい景色なので……。
谷底から橋までの高さは122メートルで日本一だとか。橋の真ん中の歩道にプレートが埋め込まれています。橋桁から谷を覗くと、そこに柵があるのは間違いないのに、ぞわっとしたものが這い上がってきます。高い! そして、怖い! 谷底にかかっている橋が、おもちゃの梯子のように見えます。
この大橋は鉄製ですが、金属は温度の変化で伸び縮みしますね。八甲田山麓ですから、このあたりの冬の寒さは厳しく、夏との温度差は鉄の部分で 50℃にもなるのだとか。夏と冬では左端と右端でそれぞれ10センチ以上の差ができるそうです。それって大変なことではありませんか! そのままでは橋は見事に崩落……、ということにならないように、橋の両端には長さを調節する装置がつけられているそうです。日本の架橋技術ってすごいものですねぇ。
わにもっこ
そもそも青森に行った理由とは、友人の製作したステンドグラスの納品でした。厳密にいえば、製作ではなく、修復。このステンドグラスは昭和の初期に作られたもので、持ち主が没落し、お寺さんが預かっていたのだとか。保管の仕方がわからず、そこら辺に置いてあったため、ガラスが歪んだり、反ってしまったり、割れてしまったりしていたそうです。その修復を請け負ったのが、友人たち、ステンドグラス職人の面々。修復という作業は、アーティストとしてはストレスがたまる部分もあるのではないかと思いますが、見事、職人に徹して復元したもようです。
完成したステンドグラスをそのまま置いておいたのでは元の木阿弥になりかねないので、持ち主のお寺さんが、「木工で木枠を作って衝立にしよう」と目論まれたのだとか。そこで、修復のなったステンドグラスを持ち込んだのが「わにもっこ」です。青森は「ひば」をはじめ、家具や木工材料になる素晴らしい材木の産地。大鰐にある木工工房「わにもっこ」では、これらがシンプルで木の香りが漂う素敵な椅子やテーブル、木のおもちゃ、食器などに加工されていました。ここで、修復されたステンドクラスにも立派な枠が作られるのだそうです。
「わにもっこ」が設立されたのは1988年。頑固で無口な職人のおじいさんが黙々と木を刻んでいるのかと思いきや、元気いっぱいの青年たちばかり。しかも、イケメン揃いで(^_^;) 隣にある展示館「こかげ」には「わにもっこ」で制作した小物や家具が置かれています。
どれ一つとして同じもののない手作りの暖かみと木のぬくもりが伝わってくる逸品が並んでいます。「いつか、こんな家具の置ける家に住みたいなぁ〜」と、入れ物のほうから考えなければならない自分が情けない(-_-;)
裏手にある「ひばのくに迎賓館」は総ひば造りのログハウス。宿泊することもでき、季節の山菜など、山ならではの料理を提供してくれるそうです。もちろん、コーヒーを飲みながら、のんびり過ごすだけでもOK。
「わにもっこ」あるところは、ほら、こんなに美しい山の緑に囲まれているのですから。